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超・実録!「もしも隣人がDV男だったら…?」【前編】

吉田奈美

吉田奈美

 

昨日、ついに隣人のDV男との戦いを終え、新居に引っ越し完了いたしました!

……と、私事満載な書き出しで申し訳ありませんが、隣人にDV男が引っ越して以来約8ヶ月間、紆余曲折の末、今に至ります。

 

目次

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「もしも隣人がDV男だったら…?」

「自分自身がDV被害者」という物語はそこらじゅうにありますが、意外に触れられず、物語のサブキャラの座すら許されない日陰中の日陰的な被害者である『DV家の隣人』。せっかく経験してしまったのですから、日陰者である『DV家の隣人』にスポットライトを浴びせるべく、この場をお借りしてお伝えできればと思います。

そしてDV家の隣人にもしもなってしまった際に、いったいどんなことが起こり、そしてどんなことをすべきなのか、一緒に考えていけたらと思います。

 

■11月/出会いは紳士的だったDV男

昨年11月ごろ、“その男”はやってきました。隣の角部屋の住人がいつの間にかひっそりと引っ越しをし、間髪入れずにすぐに入居したのが問題の男でした。

都内のひとり暮らし用マンションゆえ、入り口などで鉢合わせしても挨拶もなくというのがアタリマエですが、その男と初めて遭遇した際、わざわざ「今度○○号室に引っ越してきました。よろしくお願いします」と笑顔で話しかけてきたのです。

このときの印象は、好青年

なんたる見る目のなさ!

いや、そうではなく、のちのちDV男を調べるうち、彼らの特徴は社会的には外面がよく、一見すると好青年である場合が多いようなのです。

 

■12月/引っ越し早々始まったDV!

ある夜、それは始まりました。

深夜1時ごろ、パソコンに向かい仕事をしていたら、突如壁に何かがものすごい強さでぶつかる音と大きな振動が起こりました。そのあまりにもすさまじい衝撃に驚き作業を中断し、何が起こったのか状況を確認すべく、しばらくじっと息を潜めていました。

すると、またもや同じように「ドカーン! ドカーン!」と壁に何かが体当たりしてきたのです。今までこの部屋に6年ほど住んでいましたが、隣人の気配を感じたのはこのときが初めてでした。

そしてその後、何を言っているかはわからなかったものの、男の罵声が続いたのです。

しかしこのときはまだ何が起こったのかわからないままでした。

 

■1月/ようやく事態を把握

最初の衝撃からしばらくは、何もない平穏な日が続きました。が、その数日後、またもや同じような壁への大きな衝撃と怒声が! いったい何が? 隣人は壁に体当たりするのが日課のクレイジーな男!? ……不安と恐怖でいっぱいに。

しかし翌朝、ついに状況を理解したのです。隣人が玄関から出るときに遭遇してしまったのですが、男の後ろには、若い女が連れ添っているではありませんか! 恐らくこの女が付き合っている彼女で、時折隣人宅に泊まりに来ており、そしてその際にDVを受けているのではないかという状況が見えてきたのです。

 

■2月/管理会社に相談

その後も数日おきに男のDVが続きました。ときに男性の罵声に混じり、女性の泣きわめく声が聞こえることも……。

男のDVが続く間は何もできなくなり、警察に通報しようと思いつつも携帯片手にじっと息を潜める日々。毎回男のDVは1時間ほど、長いときは3時間近くも続きました。

 

なぜ警察に通報しなかったのか。

よくこの手の事件で隣人が通報しなかったことを責め立てる風潮にあることを理解していますし、私自身、そうすべきだとずっと考えていました。

……しかし実際に自分がその立場に立ってみるとこれができないんです。その凶行が行われている間は思考回路が停止し、ひたすら恐怖に支配され、電話を握ることまではできても、実際に電話するところまで行き着かないのです。そしてDVが終わるたび、「次こそは通報しなくては」。そんな“恐怖⇔自責”のスパイラルでした。

しかし何かしらしなければならない、だけどどうしたら……。まずは管理会社に相談すべく連絡をすると、「では、その部屋の主のポストに、近隣から騒音被害報告が届いておりますので自粛するようにとの警告のチラシを入れます」という回答が。

いやいや待って! そのチラシを入れることで隣人である私(DV男は角部屋のため、隣人というと真っ先に連想するであろう人物が私でした)の存在を意識させてしまうではありませんか。そしてそんなチラシごときでDVが収まるとも思えません。

「ますます状況を悪化させるだけでは? 何かよい方法は?」と問うも、あとは警察に通報していただくしか……という回答でした。やはり通報しか解決する道はないのでしょうか。そして通報することで本当に解決するの!?

 

■3月・その1/警察に相談

なおも続く隣の部屋のDV。管理会社にも言われたように、やはり警察に通報するしか手段はないのかも。そう考えたものの、やはりあの渦中に通報できる自信はなく……。そこで、日中に警察署に赴き現状を報告し、何をすべきか、またもし通報したら警察はどう動いてくれるのかを確認しに行きました。

しかしここでも「DVの最中に通報してください」という回答が。「匿名でも通報できますから」と念を押されましたが、「匿名で通報したとして、警察は実際にどのようにその家に赴きどう呼びかけるんですか?」とたずねると、「“ご近所からの通報でお伺いしました”とだけ言うので、あなたの名前は出しませんから安心してください」と。

でもちょっと待って! 回覧板を回し合うような環境ならともかく、そもそもが都会のマンション暮らしで表札に名前すら掲げていないような住環境。もちろんDV男は私の名前を知りません。

匿名通報をしたからといって、元々が「匿名」で暮らしているわけで、「匿名」にすることで、いったい何がどう安心なのでしょうか。匿名での近所からの通報=隣の部屋の私、という図式がまずその男の頭に思い浮かぶのではないでしょうか。匿名だろうと名を名乗ろうと、状況はなんら変わりないようです。

DVを通りすがりで目撃したのなら、もちろん通報できると思います。しかし私は通報後もなお、その場所に住み続けなければならないのです

私からは「“パトロール中に大きな騒音と叫び声を聞いて駆けつけた”と言ってもらえませんか?」と頼みました。しかしそれはできないと却下。

事態は変わらぬまま、警察署をあとにしました。

ほかに相談できる窓口はないものなのか……。

そこでたどり着いたのが、区の人権政策課でした。そこであるアドバイスを受け、その男の生態を調査することにしたのです。