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「これってストーカー?」もしもに備える適切な対処法【後編】

中田綾美

中田綾美A.Nakata

前回の記事では、どういう行為が法律で規制されるストーカー行為に当たるのかについてざっくりと解説しました。

【後編】では、実際にストーカー被害に遭ったときに、どのように対処すべきかについて、前回に引き続き馬場・澤田法律事務所の弁護士・手打寛規先生のお話をもとに解説します。

 

目次

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■まずは証拠収集を

前編でもお伝えしたように、元交際相手が復縁を迫って待ち伏せしたり、しつこくメールや電話などで連絡してきたりするのも、ストーカーに当たる可能性があります。

もちろん、あなたが毅然とした態度をとり続ければ、そのうち向こうがあきらめてくれるということもありますが、あまりにも思い込みが激しい相手だと、どんどん行為がエスカレートして悲惨な事件にまで発展することも……。

「この人、ホントにヤバイ!」となったときに、すぐに警察や弁護士に相談できるように、「これってもしかしてストーカー?」という被害に遭った場合には、証拠を残しておくことが大事です。

たとえば、電話を録音したり、メールを保存したり、相手が待ち伏せしているところを写真に撮ったりなどが挙げられます。

こうした証拠があれば、警察や弁護士が迅速・適切に対応しやすくなります。ただし、証拠がなければ相談してはならないというわけではありません。後述のように、ストーカー被害の解決は、なるべく早期に相談することがカギなので、きちんと形に残る証拠がない場合でも、これまでの迷惑行為を時系列にまとめたメモを持参するとよいでしょう。

また、「これ証拠です。私、ストーカー被害に遭ってますよね?」と、ただ証拠を渡されただけでは、警察も弁護士も困ります。証拠はただ集めればいいというわけではなく、それを使って人にわかりやすく状況を説明できるように整理することも非常に重要です。

 

■加害者を逆上させないためには?

ストーカー被害に遭っても、警察や弁護士などに相談するのをためらってしまうのは、「相談なんかしたら、かえって加害者を刺激するのではないか」というおそれがあるからではないでしょうか。

もちろん、専門機関に相談することによって、相手が逆上してしまいかえって悪い結果を招くという可能性がないわけではありません。

そこで重要なのが、相談のタイミング。深刻になる前に、早めに相談したほうが、事態の収拾は図りやすくなります。

というのも、ストーカーの加害者は、ストーカー行為をすればするほど思いを募らせ、また自分の行為を正当化してしまう傾向があるからです。つまり、「自分はただ純粋に彼女を愛しているだけなのに、警察や弁護士が出てくるとは何事か!?」というのが逆上の心理。

とすれば、ストーカーの期間が長かったり、行為が悪質だったりするほど、逆上の危険性は高くなるといえるでしょう。

逆に、ストーカーの初期段階で警察や弁護士の介入があった場合には逆上するというより、「え? 自分はそんなにヤバイことしてたのか?」と相手が冷静になる見込みがあります。

なので、少しでも「なんか気持ち悪い。この人ヤバイ」という兆候があれば、すぐに証拠収集に着手して、なるべく早い段階で専門機関に相談してください。

 

■弁護士なら誰でもOKというわけではない

警察に相談しても、証拠が不十分だったりあなたの説明がうまく伝わらなかったりすれば、警察が動いてくれるとは限りません。警察に駆け込む前に、弁護士に相談して証拠や状況を整理しておけば、警察が迅速に対応しやすくなります。

また、あなたのかわりに弁護士が加害者と面談し、ストーカー行為を繰り返さないように警告するという対処法もあります。「あなたのやっていることはストーカーよ!」と被害者がいくら訴えても、馬耳東風という加害者でも、弁護士との面談でやっと事の重大さに気付くということがあるのです。

ただし、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。医者の場合、外科・内科といった専門分野があるように、弁護士ごとに得手不得手があるからです。

特にストーカー事件の場合、何か一定の手続きさえ踏めば解決というものではありません。面談中に加害者が逆ギレしてしまっては、それこそ話し合いどころではなくなるので、加害者を刺激せずに納得させる高度な交渉術が弁護士に必要です。

ストーカー事件解決に適した弁護士を探すには、弁護士事務所のHPを確認するか、もしくは法テラスで紹介してもらうといいでしょう。

また、弁護士に相談した際に、どれくらいあなたの話をほりさげようとしたか。特に、加害者の情報をどれだけ熱心に集めようとしたかというのもポイントです。

というのも、ストーカー事件の解決には、加害者を逆ギレ・逆上させないということが不可欠だからです。弁護士は交渉のプロですが、手掛かりが少ないよりも相手の情報が多ければ多いほど作戦が立てやすくなります。

なので、加害者の情報をあまり集めずに、あなたの話をひととおり聞いただけで安易に「よくある事例なので大丈夫です」と言うような弁護士がもしいれば、その弁護士に依頼するのはちょっと考え直したほうがいいかもしれません。

 

【前編】でも紹介したように、ストーカー行為は意外と身近に起こりうるものです。

ただ、軽いうちはまだしも、深刻な事態になればなるほど、どんなに優秀な弁護士でも解決は難しくなります。「これってもしかしてストーカー?」という被害に遭った場合、「これくらい大したことないかも」とタカをくくらずに、どうか早めに専門機関に相談してくださいね!

 

【取材協力】

※ 馬場・澤田法律事務所:手打寛規弁護士