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セックスと愛は別物?セックスレス婚をする34歳女教師のこれから【第11話・後編】―シンデレラになれなかった私たちー

毒島 サチコ

毒島 サチコS.Busujima

Case11:彼とのセックスレスに悩む女性

名前:リホ(34歳)

徳島県出身。大阪市で小学校教員として働いている。付き合って6年目になる婚約者がいるが、3年以上セックスをしていない。

セックスと愛は別物だ

「セックスには2種類あると思うの。快楽を求めるためにするセックスと、子供を作るためにするセックス。だから、セックスと愛情を必ずしも結び付けなくてもいいと思うんだよね」

アヤカの言葉を聞いて、私は結婚後のことを考えていました。

3年もセックスレス状態が続いている私にとって、婚約者である彼とのセックスは、何のためにするセックスなんだろうか……と。

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結婚前に彼と話し合ったこと

それでも、私は彼と一緒にいたいと思いました。結婚して、子供をつくることが、ふたりにとって大切なことなんだ……と。

そして、こう考えたのです。

「これからは、子供を作るためにセックスをしよう」

挙式の3か月前、私は彼と結婚後のセックスについて、ちゃんと話し合いの場を設けることにしました。

「ねぇ、私、子供欲しい。だから、ちゃんとセックスしたいの」

仕事から帰ってきた夫となる彼に、こう問いかけました。

私が真剣に言うと、彼も「そうだね。俺もそう思う」と言って、深く頷きました。

私は、ヨウコに教えてもらった妊活アプリを彼に見せ、「これから、このアプリで計画的に妊活しようと思う」と続けました。

彼は、妊活アプリの画面を見ると「なんか、仕事みたいだね……」と呟きました。そして「セックスが子作りのための作業って……なんかショックだな」と言いました。

「だって、全然してないんだからしょうがないじゃん! 結婚したら、すぐ妊活を始めようよ」

私が強い口調でそう言うと、彼は黙って頷きました。

でも私の頭の中には、もうひとつの選択肢が、浮かんでは消えていたのです。それは結婚後、快楽のためにセックスをする、つまり彼以外の男性に抱かれるという想像でした。

セックスと愛は別物か

 「いいじゃん、ちゃんと話せたんだ」

日曜日、私はいつものようにアヤカとカフェでコーヒーを飲みながら、ディープな話に花を咲かせていました。

アヤカは、冗談交じりに「あとは、旦那以外のセフレが必要ね(笑)」とふくみ笑いを浮かべています。

「いや、彼のことが好きだからそれは無理!」という私に、アヤカは「でも、女の性欲は40代がピークらしいよ」と言いました。

セックスを愛と切り離して考えるアヤカのことを、私はどこかうらやましく思っていました。その姿は、周囲の固定概念にとらわれない、今どきの女性の生き方をしているように見えます。

私は、「自分はこの生き方でよかったのかな……」とぼんやり考えていました。

セックスは快楽のためだけのものと割り切るアヤカのような生き方も、それはそれで幸せだったのではないかと思ったのです。

私は彼が好き。それなのに、他の人とセックスをするなんて……。でも、性的な欲求がないかといえば、それはウソになります。もし、今の私の前に「快楽のためのセックスだけをする相手」が現れたなら……

「セックスと愛は別物だから、快楽だけの相手を作ればいいのよ」

アヤカはキッパリとそう言い切り、自分の欲望に向き合ってセフレをつくることをすすめてきます。

「あ、そうだ! そういえば彼とこの前、すごくいいカフェに行ったんだよね。今度リホも一緒に行こうよ。確か、彼がSNSにアップしていたような……」

リホはスマホをタップし、セフレの彼のフェイスブックを開きました。

「えー! どれどれ?」

私は身を乗り出し、アヤカのスマホ画面をのぞき込みました。

そのとき、アヤカの手が凍りつきました。

「え……」

アヤカは、消えそうな声で驚きの言葉を口にした後、続けて「聞いてない」と言いました。 

「……どうしたの?」

私は、いつもと様子が違うアヤカの姿を見て、恐る恐る聞きました。

アヤカは何も言わずに、ふるえる手で彼のフェイスブックの画面を見せてくれました。そこにはセフレの彼が、ロングヘアの20代くらいの女性と、指輪をして笑顔で映っていました。そこには、こんな文面が添えられていたのです。

【ご報告】

2020年3月。新しい家族ができました。

それは、彼の結婚報告でした。

快楽を得るためのセックスにも愛情は育つ

アヤカは混乱して「ありえない」「聞いてない」と繰り返しました。

「セックスと愛情を必ずしも結び付けなくてもいいと思うのよ」と、自信満々に語っていた彼女はもういません。スマホの画面を見つめるアヤカの目は、嫉妬に満ちていました。

「でも、単なるセフレだからいいんじゃないの?」

そう言っても、アヤカは「ひと言もなんて……ありえない」と繰り返すばかり。嫉妬に満ちたその表情からは、割り切りなんて微塵も見えません。アヤカは、ぼそっとこう呟きました。

2年も一緒にいたのに……」

最初は割り切って始まった関係でも、体を重ねるうちに、次第にそれは愛に変わっていたのです。

「セックスと愛は別物なんて、多分無理なんだろうな……」

取り乱すアヤカの姿を眺めながら、私はまた、自分自身のこれからのセックスについて、考えていました。

考察:セックスレスをどう乗り切るか

愛情のないセックスは出来ない 

「やっぱり愛がないセックスはできないと思いました」

取材の後半、リホさんは、そう語りました。そしてその日、彼に泣きながら彼にこう伝えたそうです。

「私はあなたが好き。好きだからセックスもしたいし、好きだからあなたの子供が欲しい」

セックスレス婚のその後

 「セックスレスだったのは、お互いの時間や気持ちがすれ違っていただけかもしれないです。それに、妊娠のための作業だと思った瞬間、セックスを楽しむことはできないなって」

リホさんは、アヤカさんの言葉に一文を付け足しました。

”セックスには2種類ある。快楽を求めるためにするセックスと、子供を作るためにするセックス。どっちのセックスも、たぶん愛を含んでいる”

「今は、ふたりだけでも幸せだけど、子供がいたらもっと幸せかなと思って、生活しています」

快楽を求めるためにするセックスも、やがて愛をはぐくんでしまう。

子供をつくるためにするセックスもまた、愛がなければならない。 

リホさんは今も妄想することがあると言います。彼以外に、セックスをしたいと思うような相手が現れたらどうするか……。

この、答えのない問いの答えは「快楽」でしょうか、それとも「愛」でしょうか。

【筆者プロフィール】

毒島サチコ

photo by Kengo Yamaguchi

愛媛県出身。恋愛ライターとして活動し、「MENJOY」を中心に1000本以上のコラムを執筆。現在、Amazon Prime Videoで配信中の「バチェラー・ジャパン シーズン3」に参加。

【前回までの連載はコチラ】

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次回:4月18日土曜日 更新予定

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