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付き合うって何?セフレとどう違う?コロナ禍で悩むアラサー女子が出した答え【第17話・後編】ーシンデレラになれなかった私たちー

毒島 サチコ

毒島 サチコS.Busujima

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Case17:コロナ禍で好きな人に会えなくなった女性

名前:マリ(29歳)

広島県出身。現在は大阪で、英語の塾講師をしている。短期留学で日本に来ていたイギリス人のジョンと恋に落ち、友達以上恋人未満の関係に。帰国したジョンと、1年後にイギリスで会う約束をするが、このコロナ禍によってその約束はうやむやに……。

友達以上恋人未満

イギリス人のジョンと、デーティング期間(友達以上恋人未満の期間)が1年ほど続いた2019年の冬。とうとう彼がイギリスに帰る日が訪れました。

最後のデートの日、私はこう宣言しました。

「私、来年の春にはイギリスにいくね!」

ジョンは「マリがイギリスにきたら、僕の友人や両親を紹介するよ」と言ってくれました。それは「デーティング期間(友達以上恋人未満の期間)」が終わり、「恋人になる」ことを意味していました。

こうして訪れた2020年。私が想像していたような春はやってきませんでした。ジョンとの再会は、新型コロナウィルスの世界的な流行で断たれてしまったのです……。

前編はコチラ

遠距離恋愛の結末は…

帰国してしまったあとも、ジョンとは毎日やりとりを重ねていました。ジョンの大学の授業のことや、就職のこと。そして私の仕事のことや家族のこと。

「僕が就職したら、マリと一緒に住むのもありだね!」

ジョンは、大学を卒業したら自動車メーカーに就職したい、と夢を語りました。私は就労ビザを取得し、2020年の春にイギリスに行く準備を進めていました。

しかし冬から春にかけて、じわじわと新型コロナウィルスの感染拡大のニュースが飛び込んでくるようになりました。

「ジョン、そっちはどう? 心細いし、はやく会いたいな」

「いやぁ、イギリスはすごく大変だよ」

だんだんと、ジョンの返事がそっけなくなりはじめたのもこのころです。

コロナ禍のイギリス

イギリスでは、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めようと、早い段階から、さまざまな規制が導入されていました。その影響で生活が一変したとジョンは言いました。

私がイギリスに行く予定だった4月は、まさに最悪の状況。春に大学を卒業したジョンは、就職先も決まらず、アルバイトをしていたパブも閉鎖されて、マンチェスターの実家でしばらく過ごすのだと言います。

「マリ、今イギリスに来るのはやめたほうがいいかもしれない」

「……今は難しくても、いつか行きたいと思ってるよ」

「いや、今の仕事をちゃんと続けて、日本にいたほうがいい」

「うん。でも今すぐじゃなくてもいいから会いたい」「ジョン、会いたいよ」「会えなくてもいいから、ビデオ通話しない?」

メッセンジャーを何度も送りましたが、ジョンからの返事はありません。こうしてあっけなく、ジョンとの連絡が途絶えたのです。

耐え切れなくなった私は、日本人の友人に電話で相談しました。でも友人から言われたのはこんなひと言でした。

「え? だって付き合ってないんでしょ? それってただのセフレじゃん」

友人のそのひと言で、私は1年前にジョンとの会話を思い出していました。

「付き合える」という未来への希望

「私たちって付き合ってるんだよね?」

デートをして、カラダを重ねても、ジョンが私に「付き合おう」と告白してくれることはなく、不安に感じ始めていた3回目のデートの後。これじゃまるでセフレじゃん。そう思っていた私に、ジョンはこう答えました。

「どうしてそんなに、付き合うという口約束にこだわるの?」

ジョンとは、土日はいつも一緒にいて、会う度にセックスもする。体の相性もいい。ただ、付き合っていないだけ。私は次第にこう思うようになりました。所詮「付き合う」というのは口約束。周りからはセフレに見えたとしても、私とジョンの関係のほうが、口約束だけでつながっている恋人よりもずっとずっと幸せなのではないか……と。

しかし、現実は違いました。

会えるかどうかわからない不安の中では、「付き合っている」という口約束のほうが、意味があったのです。「いつか付き合える」という未来への約束が、私のジョンへの気持ちをつないでいたのです。

友だちとの電話を切ったあと、私はへなへなとその場に座り込みました。

「それってただのセフレじゃん」

友人の言葉が、繰り返し私の脳内で再生されていました。

考察:付き合うってどういうこと?

「“付き合ってないじゃん”と友人にいわれたとき、私は“あぁ、そうだ、私たちは所詮、デーティング期間(友達以上恋人未満)の仲なんだって。そうしたら、急に虚しくなりました」

取材の後、マリさんはこう振り返りました。

「留学経験もあったし、普段から外国人男性と接点が多かったので、日本っぽく、“付き合う”っていう口約束があって、初めてカップルになるっていうことに、少し疑問がありました。口約束だったら別にいらなくない?って。

でも、遠距離恋愛になって、考え方が変わったんですよ。“イギリスにいけば、ジョンと付き合える”っていう思いだけで、先の見えない不安に耐えていたんです」

言葉を大切にする日本人の恋愛観

マリさんはこう続けました。

「デーティング期間って、仕事でいえば、インターンみたいな状態ですよね。複数の企業でインターンは可能だし、最終的に自分に合ってる企業に入ればいい。そうすれば、“こんなはずじゃなかった”って思うことも少ない。恋愛も、そういう意味ではいい考え方なんじゃないかなって。

でもインターンって、企業が余裕のあるときにしかできないですよね。今はコロナでそんなこといってられない時代になったから……。日本でも雇い止めとか、内定取り消しとか、いろいろニュースになったじゃないですか。

恋愛でも同じで、ちゃんと付き合っているなら乗り越えられたかもしれないけど、私みたいに“安定しない関係”はすぐに切り捨てられるから」

不安の中、マリさんはひとつの答えにたどり着きました。

「こんな世の中だからこそ、日本人の、言葉を大切にした恋愛スタイルを見直しました。“付き合ってください”というちゃんとした意思表明を経て、たったひとりの恋人になるっていうことは、とても素敵なことなんだと気づきましたね」

それがただの口約束だとしても……「付き合ってください」という言葉をもって恋人になる過程は、今こそ大切にすべきかもしれません。

【筆者プロフィール】

毒島サチコ


photo by Kengo Yamaguchi

愛媛県出身。恋愛ライターとして活動し、「MENJOY」を中心に1000本以上のコラムを執筆。現在、Amazon Prime Videoで配信中の「バチェラー・ジャパン シーズン3」に参加。

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