恋のなやみに効くメディア

婿養子とは?苗字はどうなる!?制度の概要や日本での割合を解説

水野 文也

水野 文也F.Mizuno

目次

隠す

1:婿養子とは?わかりやすく解説!

(1)婿養子とは?苗字はどうなる?

日本では結婚する場合、男性か女性いずれかの姓を名乗ることになります。男女別姓の議論が活発化していますが、現在でも男性の姓で婚姻届けを出し、女性が「嫁入り」の形を取ることが多いでしょう。そうした中で、女性の姓で婚姻届けを出すのが「婿入り」です。「婿入り」は、婿養子という言葉のイメージが強いかもしれません。

しかし、婿養子というのは、単に「姓」だけの問題ではなく、戸籍上で女性の親の養子となり、「家を継ぐ」ということを意味するのです。

いまでも風習として残っている「家」の制度。多くは、家を継いだ男性が女性を嫁として迎え、生まれた子どもを跡取りにするという形で家名を残してきました。しかし、跡取りとなる男子がおらず、女子しかいない場合、婿養子を取って存続させたのです。実際、有名企業のオーナー経営者にそうしたケースがいくつか見られました。

妻になる女性の親の養子になるわけですから、当然、婿養子になった男性は女性の苗字となります。正確にいうと、女性の姓を名乗るだけでは、婿養子とはいえません。女性の親と養子縁組をして初めて婿養子となるのです。

女性の親と同居しただけでは、その男性は「お婿さん」であっても、婿養子ではありません。なので、マンガ「サザエさん」に出てくる「マスオ」さんを、婿養子の例として挙げるのは間違い。マスオさんの姓は、サザエさん一家の「磯野」ではなく「フグ田」ということからも、婿養子ではないことは明らかです。

(2)日本における婿養子の割合

では、日本の婚姻における婿養子の割合はどうなのでしょうか。残念ながら、婿養子が明確にどれくらい存在するかという統計は見当たりません。しかし、戦前までの「家」という制度が法的になくなった現在では、その数は少ないと予想することができます。

厚生労働省がまとめた平成28年度「婚姻に関する統計」によると、氏別婚姻件数で妻の氏を選んだカップルはわずか4%にすぎません。これには、姓だけを妻のほうにしたという夫婦も含まれているので、婿養子の割合は4%より、さらに低いといえるでしょう。

2:婿養子のメリット、デメリット5つ

(1)嫁姑問題が発生しない

婿養子の夫婦で最もよくいわれるメリットです。嫁姑のいざこざは、昔からよくあることですが、「あなた、どっちの味方なの?」と、妻と実母の板挟みになって夫が苦しむことはないですし、妻の立場にしても気持ちがラク。

夫がマザコンであったとしても、婿に出したということから、義母から過ぎた干渉を受けることはないでしょう。女性側の家業を継ぐために婿養子に入った男性は、待遇面でも配慮されるかもしれません。なんせ貴重な「跡取り」なのですから。

(2)相続権の対象が増える

戸籍上で養子縁組すると、実の両親と同じように女性側の親の相続権も得ることになります。男性は、実家の両親からの相続権が消失することはありません。つまり相続権の対象が増えるといえるでしょう。

遺産相続人が増えることで相続税控除額も増えるので、節税の効果も生じます。ただし、妻の両親に限らず養子先の相続権が発生する人物に多額の借金など負の遺産がある場合、それも相続することになるので注意しましょう。

(3)扶養義務も増える

婿養子に入った男性は、相続権が増えると同時に扶養義務も増えます。妻の両親の生活を維持するため、経済的に余裕があれば、可能な限り支援してあげなければなりません。実の親も扶養するとなると、男性は負担が大きくなるでしょう。あらかじめ、家族で話し合っておいたほうがいいと思います。

(4)離婚する際にトラブルのリスク

婿養子で最大のデメリットは、離婚する際に手続きが面倒なほか、それに伴いトラブルが発生するリスクが大きい点でしょう。妻と離婚、あるいは死別した場合でも、妻の親との養子縁組は解消されません。扶養義務や相続権は残ります。

親が資産家の場合、「絶対に遺産を渡したくない」などとならないとも限らず、養子縁組については慎重に行う必要があると思われます。

(5)マスオさんにならないでもよい?

新婚の間は、「ふたりきりで過ごしたい」と思う夫婦も多いでしょう。婿養子というと妻の両親と同居、つまり、サザエさんのマスオさん家族のようにならなければならいというイメージがありますが、養子縁組とは戸籍上のこと。「養子=同居」ではありません。もちろん、夫を世帯主にして住民登録することができます。

3:まとめ

江戸時代の武士は「お家大事」とばかり、家名を保つために「婿養子」が頻繁にあったようです。いまでは「婿養子」のケースが少ないことは上述したとおりです。しかし少子化の現在、これから代々引き継いだ家業を続けるために、婿養子のケースが増えるかもしれませんね。

【参考】

平成 28 年度「婚姻に関する統計」-厚生労働省