恋のなやみに効くメディア

「新しい恋愛様式」っていったい何?心理学者が語るコロナ禍で変わったものと変わらないもの

少佐

少佐

©gettyimages

目次

隠す

1:恋愛スタイルが一変した2020年

ソーシャルディスタンスを意識したり、お出かけを制限したり……。毎日の新型コロナ関連のニュースにも、新しい生活スタイルにもすっかり慣れてしまったという人も多いのではないでしょうか。

恋愛事情においても、当初は「コロナ破局」「コロナ離婚」などのネガティヴな変化をさまざまなメディアで目にしました。逆に「コロナ婚」「コロナベイビー」など、結びつきを強める恋人たちも。

こうした、生活スタイルの変化に伴う、2020年の恋愛模様のレビューを、心理学者の藤井靖先生に聞いてみました。

2:距離は恋愛のかたちを変える?

――外出自粛や移動自粛がなくても、リスク回避のために、会う機会を減らしているというカップルはまだ多いでしょう。物理的に会えない期間が長くなると、恋愛にどんなことが起こるのでしょうか。

藤井靖先生(以下、「 」内同):「会えないことで、恋愛のかたちは変化していきます。一般的に、恋愛において距離というのはマイナスに働くもの。遠距離恋愛がうまくいかないのも、そこに距離があるからです。恋人の顔を見るためにお金や時間、労力などのコストがかかるとなると、どうしても会う頻度は減っていってしまいます。

恋人同士にとって、会うということは、単純接触ではなく、お互いの関係を確かめる行為。会う頻度が少なくなるだけで、相手のマイナス部分が目につくようになって、ふたりの将来にポジティブなイメージを抱きにくくなるのです」

――やはり会えないと気持ちが冷めていくんですね。そうすると、終わらせなければいけない恋、例えば不倫などにハマっている人にとっては、逆にチャンスなのではないでしょうか。

「そうなんです。臨床心理士としてカウンセリングを行う中で最近感じるのは、不倫が減っていることですね。別れようかなと思いながらもずるずると続いていた不倫関係が、このコロナ禍をきっかけに、終わるケースがあるようです。

別れ話で揉めたりすることなく、会えない状況を利用して自然消滅にもっていく。Withコロナで生まれた新しい別れ方だと思います」

3:距離が近すぎても問題なの?

――では、同棲や結婚で一緒に暮らしているふたりにも、新しい生活様式で、何らかの変化が生まれたのでしょうか。

「距離は恋愛にマイナスといいましたが、一緒に暮らすふたりの間では、違った様相をみせることがあります。毎日通勤していたパートナーが、テレワークで家にいて息が詰まると感じた人は少なくないようです。

長い時間一緒にいると、普段は気にならなかった嫌なところが目につくようになってきます。相手のいいところが見えにくくなると、相手の存在価値も感じなくなるんです。距離が近すぎると、うまくいかなくなることがある。これが恋愛の不思議なところですよね」

――遠すぎても近すぎてもうまくいかないというのは奥深いですね。ふたりにとって適度な距離を模索することが大事ということでしょうか。では、新しい生活様式の時代に、恋愛をうまくいかせるには、どうすればいいのでしょうか。

「夫婦や同棲カップルにおすすめしているのは、“ポジティブ家庭内別居”です。別居という言葉自体は穏やかではありませんが、一緒にいない時間を意識的に設けるという、ちょっとした工夫のこと。朝食や夕食など一緒に過ごす時間を決めたら、あとは家の中で別居。自分だけの時間を大切にし、仕事や趣味に没頭する。

そのうえで、決まった時間に相手と過ごすことで、相手がいてくれる価値を再確認できるんですよ」

4:オンライン恋愛の時代へ

――新しい出会いについてはどうでしょう。物理的に人と対面する機会が減ったり、行動を制限してしまうと、出会いが減りそうですが……。

「対面の機会が減っても、いい人と出会いたいというニーズはなくなりません。ますますアプリなどを活用して、オンラインで出会う人が増えていると思います。

私のカウンセリングの中でも、最近はオンラインでの恋愛に関するご相談が多くなっています。リアルとオンラインでは、出会いに大きな違いがあり、オンラインではより人を見る目が試されますね

画面の情報だけで相手を観察し、どんな人か想像して理解するには、感覚をフル回転させる必要があります」

5:危機のときに試されるふたりの関係

――ラブラブだったのに、2020年を通して、うまくいかなくなったというカップルの声もよく聞きます。

「今回の感染症の流行のような危機に遭遇したときにこそ、本当の相性が見えてきます。生活スタイルを変える中でストレスを溜めこんでしまって、楽しいはずの雑談でイライラを隠さなかったり、批判ばかりになったり……。

平時にはちゃんと順調にお付き合いを続けてきたふたりでも、危機のときに相手の本性が顕在化して、“本当は合わないかも”と愕然とするケースはやはり多いものです」

――なるほど。やや大げさにいうと、新型コロナウィルスには、ふたりの真実をあぶりだす働きまでもあったということですね。

「そうかもしれませんね。危機の中では、人間の本性が表れやすいんです。しかも会えないことでコミュニケーションが減ると、本音が出やすくなる効果があります。長い関係を築くために大切なのは、危機のときに助け合って、一緒に乗り越えていけるかということ。コロナ禍がきっかけとなって、うまくいかなくなったふたりもいれば、危機が絆を強くしたふたりもいるでしょう。

物理的に会えないことにばかり目を向けると、恋愛においてはネガティブにとらえがちですが、実はポジティブな側面もあると考えることだってできるはずです」

6:まとめ

新しい生活様式は、プラスの面とマイナスの面、両方もたらしていることがわかりました。予測しにくい情勢ではありますが、しばらくは今のような生活が続きそう……。

この状況をプラスに作用させられるよう「新しい恋愛様式」にも慣れ、コロナに負けない強い絆を手に入れたいですね。

取材協力藤井 靖 先生

恋愛の悩みも守備範囲の心理学者。臨床心理士、公認心理師でもあり、明星大学心理学部准教授も務める。心理カウンセラーとして日々幅広い悩みや相談に対応しているほか、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)や『バイキングMORE』(フジテレビ系)などの報道・情報番組やラジオ、新聞、雑誌、Webメディアで専門的立場から発信を続けている。出演情報や日々のつぶやきはTwitterを要チェック。
●Twitter
https://twitter.com/yasushi_fujii_