掲載
注意喚起の意味とは?正しくて有効な注意喚起の方法をチェック
深海雪Y.Shinkai
目次
隠す1:注意喚起とは?
(1)意味
注意喚起とはどういう意味なのでしょうか。「注意」と「喚起」とに分け、それぞれの言葉の意味を辞書で調べてみました。
ちゅう・い【注意】
1.気をつけること。気をくばること。
2.悪いことが起こらないように警戒すること。用心すること。
3.気をつけるように傍らから言うこと。忠告。
4.ある一つの対象を選択し、認知・明瞭化しようと意識を集中する心的活動。同時に、その他のものは抑制・排斥される。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
かん・き【喚起】
呼び起こすこと。呼び覚ますこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
つまり「注意喚起」とは「気をつけることへの気持ちや意識を呼び起こす」、すなわち「注意を払うように意識させる」という意味になります。しかし相手に注意を意識させるだけで、「絶対にダメ」という禁止や強制の意味はもっていません。
(2)類語
「注意喚起」と同じような意味では、「目を向けさせる」「心がけるように促す」のようなやわらかな言い方もあります。また、親しい間柄では「忠告する」、公的な意味合いでは「勧告する」、事態がよくない方向に向かっている場合は「警鐘を鳴らす」、また、強い緊急性を要する場合は「警告する」など、状況によって使い分けができるでしょう。
(3)英語で言うと?
では英語で「注意喚起」は、どう表現するのでしょう。日常的な会話では「heads-up(頭をあげる=頭をあげて注意を払う)」が使われ、ビジネスなどでは「reminder(思い出させるもの・注意)」が使われるようです。日本のビジネスシーンでも、納期などの再確認メールをリマインドメールなどといいますよね。これも注意喚起しているという意味です。
より危険な状況のときは「alert(危険に対する警報・警告)」や「caution(警戒・警告・注意)」が使われています。
2:「注意喚起を促す」は正しい使い方なの?注意喚起にまつわる言い方7つ
「注意喚起」はあとに続く言葉次第で、少しずつ意味合いが変わっていきます。それぞれ例をあげて紹介しましょう。
(1)注意喚起する
「注意喚起」は名詞として「注意喚起のポスター」のように、そのままでも使うことができますが、日常では「注意喚起する」「注意を喚起する」というように、文章として使われていることも多いです。
「注意喚起する」は発信側の言葉です。「あわててミスをしないように、注意喚起する」「不審な電話に応対しないように、注意喚起する」のように、身近な仲間や友達はもちろん、広く世の中に注意を呼びかけたいときに使います。
(2)注意喚起を行う
「大雨で川が洪水する恐れがあるので、注意喚起を行う」「不審者の情報が多発しているので、注意喚起を行う」のように、「注意を促すことを実行する」という意味で、これも発信側の言葉です。
「注意喚起する」と同じ意味合いですが、「注意喚起を行う」は発信者側の「実行しよう」という意図がかいま見られます。
(3)注意喚起を図る
「製品の長期使用による重大事故を防ぐため、より一層の注意喚起を図る」「薬の処方について間違いがないように、注意喚起を図る」のように、「注意喚起を図る」とは「注意を払ってもらえるように取り計らう」という意味。
どうしたら注意を払ってもらえるかを考え、工夫して、その注意喚起がちゃんと世の中に広まるようにしていこうという、発信側の意図も感じとれます。
(4)注意喚起をお願いする
「野生動物が街に出没して危険なので、注意喚起をお願いする」「落雷によるダイヤの乱れが生じているので、注意喚起をお願いする」のように、「注意喚起をお願いする」は「注意を払ってもらえるようにお願いする」という意味。
「注意喚起」を「お願いする」ので、受信側を目上の存在とし、発信側がへりくだった言い方になるでしょう。
(5)注意喚起を受ける
「危険な国には入国しないようにと、注意喚起を受ける」「このエリアは交通事故多発地域だと、注意喚起を受ける」のように、「注意喚起を受ける」は「誰かから注意するように伝えられた」という受信側の言葉です。
発信側の基本の言葉が「注意喚起する」なら、受信側は「注意喚起される」でもいいのでは……と思いますが、「注意喚起される」だと、人によっては注意を促されたことに不満をもっているような印象を与えることもあるでしょう。
(6)注意喚起がありました
「警察から一般犯罪による注意喚起がありました」「銀行から『なりすましメールによるウイルス被害が増加している』という注意喚起がありました」のように、「注意喚起がありました」は、注意を促された受信側が他の第三者に伝えるときの言葉です。
大きい組織や会社などからの情報を、世の中に広く知らしめるときに使われているでしょう。
(7)注意喚起を促す?
一見すると正しそうに見えるこの言葉、実は誤用です。これは、「喚起」にすでに「促す」の意味が含まれているため。もしも「促す」を使用するならば、「注意を促す」が正解です。
3:注意喚起を快く受け入れてもらえるための注意点5つ
(1)前向きな言葉を使う
「〜〜をしなければ危機に直面する」「〜〜をしなければ失敗する」などと表現すると、否定語の「危機」や「失敗」などの言葉の印象だけが残り、本来気をつけてもらいたい内容が入ってこないといわれています。
「〜〜をして身を守りましょう」「〜〜をして成功させましょう」など前向きな言葉を選んで発信しましょう。
(2)ていねいな言葉を使う
上から目線で「〜〜しないように」と命令口調で言っても、誰も気持ちよく耳を傾けてはくれません。「どうしてそんなことを言われなきゃいけないんだ」と反発されてしまうかも。注意事項がきちんと伝わるように、よりていねいな言葉を選んで、知らしめましょう。
(3)具体的にわかりやすく言う
「詐欺に気をつけてください」と言われても、何をどう気をつければよいか分かりません。「聞いたことがない声の電話にはお気をつけください」「お金を要求する電話やメールはすべて詐欺です」など、わかりやすい例を挙げて発信しましょう。誰もが想像しやすい具体例があれば、よりていねいな印象を受け、効果的でしょう。
(4)興味を持ってもらえるように工夫する
注意の内容がありきたりだと、相手に興味をもたれることなく、頭の中を素通りしてしまいます。少しでも興味を持ってもらえるように、言葉遣いやフレーズを工夫したり、あまり知られていない情報を加えたりするといいでしょう。新しい知識や面白いと思えるフレーズなどは記憶に残りやすく、注意喚起が広く行き届くでしょう。
(5)目にも耳にも訴える
ポスターや標識など目で確認できるものは、その場に止まって見なければいけないので、見逃す可能性があります。ラジオや町内放送など耳で確認できるほうが、注意に意識が向くといいます。またテレビやYouTube動画のテロップのように、目と耳の両方に届かせる方法も効果的です。それを継続することで、世に広く伝わるでしょう。
4:新型コロナなど…注意喚起が仇になった事件3つ
(1)新型コロナウィルス感染症
現代史上最大といっても過言ではないの恐怖を世界中に巻き起こしている新型コロナウィルス。「不要不急を除く外出自粛」などの注意喚起が出ましたが、「どの外出が不要不急かわからない」と声があがったり、自粛のための買い出しでパニックが起こったりと、曖昧な注意喚起によって混乱を生み出しました。
2020年4月7日、ついに日本でも緊急事態宣言が発令されました。現在、各都道府県が独自に指針を示し、さまざまな対策も取られています。終息というゴールに向かって、国民ひとりひとりが意識をもつことが大切です。
(2)大雨や台風による洪水
梅雨があり、台風の通り道である日本は、毎年全国各地で水の被害が多大です。気象庁から注意報や警報などが発表されても、逃げ遅れる人、逃げている途中で被害にあう人もおり、行方不明者や死者も多数出ています。
「注意報は避難するべきか」「警報になるまで家で待機するべきか」……。注意報と警報の注意喚起が分かりにくいという声があがり、2019年6月「警戒レベル」が導入されました。「警戒レベル4になれば全員避難」を心にとめておきましょう。
(3)十和利山熊襲撃事件
十和利山熊襲撃事件とは、2016年5月から6月にかけて秋田県の山林で発生した獣害事件です。ツキノワグマが、タケノコや山菜を採りに来ていた人を続けて襲撃し、4人が死亡、3人が重傷を負いました。
このとき、チラシや看板で注意喚起をし、現場周辺の山林を通行止めにしました。しかし、それでもタケノコ採りをしたい人の早朝入山があり、その人たちをヘリコプターで捜索したのですが、その騒音にクマが驚いて移動。結果として、広範囲での事件になってしまったと考えられているようです。
5:まとめ
「注意喚起」とは、身近な仲間や友達はもちろん、周りの人に、広く注意の意識をもってもらうために行うものです。自分の行動が周りにも影響を及ぼすことも頭に入れ、「私は大丈夫」と思わず、臨機応変に対応していきましょう。