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ピンポンダッシュって罪になる?弁護士の見解とされないための対策

並木まき

並木まきM.Namiki

目次

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1:ピンポンダッシュとは?

ピンポンダッシュとは、他人の家のインターホンを鳴らして逃げるといういたずら。

大人になって考えると、何が楽しいのかさっぱりわかりませんが、子どもの場合、必要なときしか押してはいけないボタンというのは妙に魅力的なもの。バスの降車ボタンや校内にある非常ボタンを押したくてムズムズしたという経験をもつ人は多いでしょう。

ピンポンダッシュには、用事もないのにピンポンすることの背徳感があるのかもしれません。

2:ピンポンダッシュって罪になる?弁護士の見解

ピンポンダッシュ……やるほうは何かしらの楽しみがあるのでしょうが、されたほうは腹が立つこと。もしも迷惑に感じて通報したなら、罪になるのでしょうか。生活問題に詳しい、アトム市川船橋法律事務所弁護士法人の高橋裕樹弁護士に見解をうかがいました。

(1)建物への立ち入りが「建造物侵入罪」の可能性もある

高橋:「ピンポンダッシュをするときには、マンションの共有部分や戸建の敷地に立入るケースが多いでしょう。こうした建物の管理者や所有者がピンポンダッシュのために入るのを許諾することはないでしょうから、立ち入ること自体が建造物侵入罪にあたる可能性があります」

(2)会社などにピンポンダッシュすると「偽計業務妨害罪」になる可能性がある

高橋:「次に、ピンポン(呼び鈴)を鳴らす行為自体ですが、個人宅の呼び鈴を一度押す程度では、直ちに犯罪になるということはないでしょう。しかし、会社等へのピンポンダッシュは偽計業務妨害罪になることもあります」

偽計業務妨害罪とは、SNSなどで嘘を拡散させたりして、結果的に業務を妨害したときに適用されることで知られていますが、簡単にいうと、騙して業務を妨害する行為です。会社にピンポンダッシュするということは、来客があったかのように「騙す」ことになります。そして、来客だと思った従業員などがそれまで行っていた業務を中断させる、つまり「妨害した」ということになるのです。

(3)「迷惑防止条例違反」「軽犯罪法違反」「傷害罪」の可能性もある

高橋:「また、ピンポンダッシュを繰り返すと、つきまといや押しかけとみなされ、迷惑防止条例違反や軽犯罪法違反に該当してしまう可能性もあります。さらに夜中にピンポンダッシュを繰り返すなどして不眠に陥らせるなどすれば、傷害罪にもなり得ます」

(4)いたずらでは済まない問題になるリスクもある

高橋:「ピンポンダッシュをした家には、どんな人が住んでいるかわかりません。もしもそれによって居住者とトラブルになれば、暴行や恐喝に発展することもあるでしょう。ただのいたずらのつもりだった、では済まない事態に陥ってしまう可能性がありますので、子を持つ親御さんにはご注意いただきたいです」

(5)ピンポンダッシュに似たいたずらにも注意!

また、高橋弁護士からは、ピンポンダッシュに似た「いたずら」についても、次のような注意点を教えていただきました。

高橋:「子どものいたずらが犯罪になってしまうケースは他にもあります。公園などにつばを吐いたり、ゴミを捨てたりすれば、軽犯罪法違反という立派な犯罪になってしまいます。またゴミ集積所から雑誌や自転車などを持ち去る行為も地域によっては条例違反になり、刑罰対象となることもあります。

さらに子どもだけではなく、大人もやっていますが、道に落下した銀杏などの果実は、その所有者のものです。これを勝手に持ち去る行為は、窃盗や占有離脱物横領罪になる可能性もあります。

いずれも逮捕されるレベルではないでしょうが、警察の捜査対象になりますので、気をつけていただきたいと思います」

3:ピンポンダッシュされないための対策5つ

(1)防犯カメラを設置する

防犯カメラを設置することにより「あなたの行為は録画されています」という無言のメッセージを出せるため、ピンポンダッシュをする人の心理的な負担が大きく、ある程度の抑止力になります。目立つ場所に設置すれば、対策にもなるでしょう。

(2)ダミーの防犯カメラを設置する

本物の防犯カメラを設置する予算がない場合には、ダミーを設置する方法もあります。最近のダミー製品は、よく見ないとダミーだとわからないほど精巧なものも。ピンポンダッシュの撃退にも役立つでしょう。

(3)センサーライトを設置する

人が近づくとライトがつくセンサーライトの設置も、ピンポンダッシュをはじめとした犯罪への抑止効果があるとされています。

(4)「狂犬注意」などのステッカーを貼る

「狂犬注意」など、いたずらをすると騒ぎが大きくなりそうな心理的負担を与えるステッカーを貼っておくのも、対策としての選択肢です。

(5)警察に被害を相談する

度重なる被害に悩んでいるならば、警察に相談するのも方法です。最初はただのピンポンダッシュかもしれませんが、エスカレートすれば、不法侵入などにつながりかねません。どのように対処すべきか、プロの視点からアドバイスももらえるでしょう。

4:ピンポンダッシュゲームとは?

ちまたには「ピンポンダッシュゲーム」なるものも存在します。これは、スマホのアプリでピンポンダッシュを体験できるゲーム。ピンポンをひたすら連打する動きにハマっている人もいるようです。

また「超ピンポンダッシュ」というアプリもあり、こちらも、ピンポンをひたすら押し続けるいたずらを楽しむゲーム。

ゲームの世界でピンポンダッシュをしているぶんには、誰に迷惑をかけるわけでもないので、もしもピンポンダッシュがしたい衝動にかられたら、アプリで思う存分、ピンポンを連打するのがおすすめです。

5:ピンポンダッシュは気軽な気持ちでやるべきではない

弁護士さんの解説でもわかったように、ピンポンダッシュは犯罪にもなりうる行為。気軽な気持ちでやるべきことではありません。

友人や恋人の家に、ほんの出来心でピンポンダッシュをしたくなる人もいるかもしれません。でも、いたずらのつもりが本気で怒らせてしまう場合もあります。やめておきましょう。

取材協力高橋 裕樹弁護士

アトム市川船橋法律事務所弁護士法人代表弁護士。岩手県盛岡市出身。2008年(平成20年)弁護士登録。千葉大学法経学部法学科卒業。