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「僭越ながら」とは?正しい使い方と例文、同じ意味を表す類語を解説
松田優Y.Matsuda
1:「僭越ながら」とは?
まずは「僭越ながら」の意味と、英語での言い方を見ていきましょう。
(1)僭越ながらの意味
せん-えつ【僭越】
自分の地位や立場を超えて出過ぎたことをすること。また、そのさま。「僭越な言い方」「僭越ながら代表してあいさつさせていただきます」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「僭越」とは、身分を超えて出しゃばることを意味する言葉。つまり「僭越ながら」というのは、自分の立場は承知している上でやらせていただきますという、謙虚な姿勢を表します。
(2)僭越ながらを英語で言うと?
「僭越ながら」というへりくだった言葉は、日本特有の表現方法。英語に直訳することは難しいですが、もっとも近いものでいうと「With all due respect」があげられます。これは、「恐縮ながら申し上げますが」「お言葉ですが」というような意味で、目上に人に意見するときに使います。
ただ、これは、結婚式のスピーチなどの冒頭で使う「僭越ながら」とはちょっと意味が違ってきます。この場合には、「I thank you for taking ~」を使うといいでしょう。これは、「お時間を頂戴したことに感謝します」「発言の機会を与えてくださってありがとうございます」という意味となります。
2:「僭越ながら」の正しい使い方
「僭越ながら」とは、クッション言葉のひとつ。「出すぎた真似をして申し訳ありません」という、へりくだって謙虚な気持ちを表すために使う言葉です。
目上の人や大勢の人の前でのスピーチや頼みごと、意見をいうときに使います。よりかしこまった場面では「僭越ではございますが」という言い回しをすることもあります。
3:「僭越ながら」を使うシーン・例文5つ
「僭越ながら」はどういったシーンで使うのか、例文を合わせて見ていきましょう。
(1)結婚式のスピーチ
結婚式では、自分より目上の人もゲストとしていることでしょう。その中で自分が挨拶するということは名誉なこと。「僭越ながら」はその気持ちを表現するための冒頭の言葉として定番となっています。
「僭越ではございますか、ご指名いただきましたのでお祝いを申し上げたいと思います」
「誠に僭越ではございますが、友人代表として挨拶させていただきたいと思います」
「僭越ながら、ご指名にて乾杯の音頭を取らせていただきます」
こうした決まり文句のような使い方は、覚えておいて損はないでしょう。
(2)目上の人との会話
仕事の取引先や社長、上司と話すときに使うと、誠実さや謙虚な態度を示すことができます。
例えば、取引先に部長のかわりに出向いたのであれば、「本日は部長がお休みのため、僭越ながら私がご一緒させていただきます」、大事な打ち合わせや会食に呼ばれたときは「お誘いいただきありがとうございます。僭越ですが参加させていただきます」といった使い方をします。
(3)目上の人に意見を言うとき
目上の人に自分の意見を言うとき、「僭越ながら」を使ってワンクッション入れると、生意気さを和らげながらも、言いたいことを言うことができます。
例えば、会議で上司の意見と自分の意見が合わないとき、何か議題に対して意見を求められたときに「僭越ながら、意見を申し上げますと、Aの企画よりもBの企画のほうが、より効率がいいのではないでしょうか」や「僭越ながら、私の考えを述べさせていただきます」というように使います。
(4)会議やセミナーの挨拶
規模の大きい会議や大勢の人に向けたセミナー、新年会や忘年会などで司会を務めたりスピーチをしたりするときにも使えます。
「僭越ながら、私が司会を務めさせていただきます」や「僭越ではございますが、ご指名いただきましたので、ひと言ご挨拶させていただきます」という感じです。
新入社員や若手の社員が抜擢された際に使うと、教養が身に付いていると思ってもらえるでしょう。ただし、「僭越ながら」は目上の人に向けて使う言葉。同僚や部下ばかりのシーンで使うと嫌味に聞こえてしまいかねないので、そこは吟味してくださいね。
(5)ビジネスメール
ビジネスメールというのは、取引先とのやりとりも多いかと思います。取引先というのも、もちろん目上の相手。「僭越ながら」を使うことによって、真摯な態度を見せつつ、へりくだることができます。
相手が微妙に間違っている場合などに「僭越ながら、何点かご確認したいことがございます」といえば、やんわりと修正が可能ですし、身の丈以上の会食などの返事には「お招きいただきありがとうございます。僭越ではございますが、喜んで出席させていただきます」と書けばスマートです。
4:僭越を表す類語3つ
僭越には似た意味を持つ言葉がいくつかあります。「僭越」の類語をご紹介します。
(1)恐縮
ビジネスシーンでは、「恐縮ながら」は「僭越ながら」と似たようなニュアンスをもちます。相手に頼みごとをするときなどには「恐れ入りますがご確認ください」と言いますよね。目上の相手に褒められたときには「恐縮です」などと言うと、とへりくだって謙遜しながら感謝している雰囲気になります。
(2)不躾
「不躾」はぶしつけと読みますが、僭越ながらの類語として使う機会も多い言葉です。意味は礼儀のないこと。
「不躾ではございますが」というように、「立場や礼儀をわきまえず、あえて非礼をはたらきます」というニュアンスで使うことが多いです。同じニュアンスならば「厚かましいお願いですが」などと使う「厚かましい」も僭越の類語になります。
(3)お言葉ですが
「僭越ながら申し上げます」といった形で僭越を使うのであれば、「お言葉ながら申し上げます」と言い換えることができます。ビジネスシーンでは目上の人と異なる意見を言うときに使うことが多いです。
5:まとめ
「僭越ながら」は使いどころを間違えると恥をかいてしまうこともあります。また、頻繁に使うと、ウザいと思われることも。要所要所で使えるようにしたいところです。