掲載
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの意味は?心理と実感エピソードも
月島もんもんM.Tsukishima
1:坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの意味は?
まずは「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という言葉の意味を確認していきましょう。辞書で調べてみました。
坊主(ぼうず)憎けりゃ袈裟(けさ)まで憎い
その人を憎むあまり、その人に関係のあるものすべてが憎くなるというたとえ。
〈出典:デジタル大辞泉/小学館〉
ちなみに「袈裟」とは、お坊さんが来ている衣装のことです。
では、英語で同様の意味をもつことわざのような言い回しはあるのかというと、「He who hates Peter harms his dog(ピーターが憎い人は彼の犬にも害を加える)」という言葉があり、意味が近いといえるでしょう。
では、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の対義語ってあるのでしょうか。好きになった相手なら短所も長所に思えるという意味で「あばたもえくぼ」という言葉がありますね。
2:坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの心理3つ
では、どうしてこのような心理になるのでしょうか。具体的にその原因を実体験から考えてみます。
(1)イヤな経験を思い出すから
「嫌いな相手って、本当に何もかもがイヤになりますよね。嫌いな人から親切をされても嬉しくないし、嫌いな人が持っているものと同じ物を見ただけでも、嫌な気持ちになりますからね。
多分、それを見ただけで、その人からされた嫌な経験がフラッシュバックするからだと思います」(Nさん・26歳男性)
(2)だんだんと嫌いが勝っていくから
「好きっていう感情と嫌いっていう感情がせめぎ合ったとき、時間が経つと嫌いっていう感情が勝るんじゃないですかね。
例えば、好きな友人と嫌いな友人が仲良しの場合、嫌いな人がいないときには好きな友人のほうとは話したり連絡を取ったりできるけど、私の場合、徐々に好きなほうの友人とも連絡を取らなくなっていっちゃいます。なんか、その人とつながっているものすべてががイヤになっちゃうんです」(Aさん・31歳女性)
(3)嫌いなものを好きになるほうが難しいから
「単純に、嫌いなものを好きになるよりも、好きなものを嫌いになるほうが簡単ですからね。嫌いなものと一緒にいるとダメージがありますけど、好きなものと離れていてもマイナスにはならないですから。その観点でみると、坊主と距離を置いているうちに、自然と袈裟まで嫌いになっていってしまうんでしょう」(Aさん・35歳男性)
3:坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの例文3つ
今度は「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という言葉を使った例文をご紹介します。これまでさまざまなエピソードに触れてきた『Menjoy!』ライターの筆者が考えてみました。
(1)同じ物は使いたくない
「超かわいいスマートフォンケースを見つけて手に入れたんだけど、嫌いな女友達が同じものを使ってるってわかったんです。“坊主憎けりゃ袈裟まで憎い”って感じでそのケースは二度と使いたくなくなって処分しました」
(2)ただの布
「あのくそ坊主、偉そうに“お金はしょせん、虚しいもの”なんて説教していきやがった。虚しいなんていうなら、あんなにお布施をとってくんじゃねえよ、まったく。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いってのはよく言ったもんだな」
「あんた、ちょっとは冷静になって考えてみなさいよ。袈裟なんてただの布だよ? 本当に布が憎いの?」
「それはもののたとえでよ。何も本当に憎いわけじゃねえけどよ」
「でしょ? お金だってただの紙切れだって思えば、虚しくもなるでしょうよ」
(3)医者が見捨てたもの
ある日、医者が道端で1万円札が落ちているのを見つけました。しかし、後ろから人が歩いてくるのに気がついて、拾うのをためらっていました。
すると、後ろから歩いてきたお坊さんがそれをなんのためらいもなく拾い上げたのです。医者はガッカリして、つい小言が言いたくなった。
「和尚さん。それは私が先に見つけたんだ」
すると坊主はこう言った。
「医者が見捨てたものは、坊主のものと決まっておるわ」
その言い草に腹が立って、医者はイヤミをいう。
「坊主憎けりゃ袈裟まで憎いって言葉を知っていますか?」
「わしは医者の不養生って言葉なら知っとるよ。なんでも“正しいと分かっていながら自分では実行しないことのたとえ”という話じゃないか」
医者はさらに機嫌を損ねる。
「そのお金はどうするんです?」
答えによっては非難してやろうと思ったのだ。
しかし、坊主は顔色ひとつ変えずに、五千円札を差し出してきた。
「ほれ、受け取りなさい。奪い合えば足りんが、分け合えばあまるものよ」
4:坊主憎けりゃ袈裟まで憎い実感エピソード3つ
(1)バッグをみても嫌な気持ちになる
「職場に威張り散らす上司がいて、なるべく関わらないようにしています。
ある日、会社の食堂でごはんを食べようかなと思ったとき、彼が使っているバッグが置いてあって、イヤな気持ちになったことがあります。それで食堂はやめにして、外で食べましたね」(Mさん・28歳男性)
(2)数学嫌いが治った
「学校で数学の授業があるんですけど、とにかく数学の先生が嫌いだから、全然やる気にならなくて、いつも赤点だったんです。
だから、数学は苦手だって思ってたんですけど、先生が代わってから数学の成績がよくなったんですよ。多分これも、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いっていう現象のひとつなんだと思います」(Wさん・17歳男性)
(3)思い出の曲
「思い出の曲ってあるじゃないですか。元彼が好きなミュージシャンがいてふたりでライブにもよく行って、私も大好きだったんです。でも、別れてからそのミュージシャンの曲を聴くのもつらくなってしまって、大嫌いになっちゃいましたね」(Rさん・26歳女性)
5:まとめ
「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という言葉は、あまり日常的には使わないかもしれません。しかし、その心理というのは日常の中によくあるもの。
ですが、嫌いなものの周辺にあるからといって、嫌いになってしまうのはもったいない。本当に袈裟が憎いのか、袈裟に罪があるのか、冷静になって考えてみましょう。